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ザ・スーパー・ポップ宣言

音壁の世界(2)

音壁の世界(2)

THE WORLD OF "WALL OF SOUND"(2)

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【 ポップ偏差値 69

夕暮れを止めて '91 作曲/楠瀬誠志郎 編曲/清水信之



当ブログで以前、アイドル音壁大作、再び 薬師丸ひろ子 / 夕暮れを止めてとして取り上げ済みの音壁名曲からヴォーカルのみを取り除いてカラオケ化(インスト化)したもの。近年の音楽編集ソフトの進化により、「ヴォーカルとサウンドとの分離」が容易になり、当ブログでも史上最強のウォール・オブ・サウンドとして複数の禁断の良曲を公開・紹介してきました。そこでは「ヴォーカルだけ抽出しサウンドは新規録音」という手法で行ってきましたが、今回はその逆パターンということになります。オリジナルは素晴らしいアレンジのウォール・オブ・サウンドでありましたが、アイドルの歌った曲ということで声質や唱法が少々残念な作品でありました。これは多くのアイドルもの又はアニソン系の音壁曲に言えることでありますが、音壁の著しい進化と歌手を本職としていない方の歌声との出来の著しい乖離は宿命ともいえますね。もちろん音壁自体アイドルやアニソン産業と密接に関わっている構造上、個人的にもそれは仕方のないことと心得ております。然しながら音壁者としては折角作られた素晴らしいサウンドを思う存分心の底から楽しみたいという気持ちを捨てることは耐え難い。そこで音楽編集ソフトの登場ということになった訳ですが、所謂カラオケ作成用のソフトは無料版含めて幾つも出ています。ある程度私のような全くの素人でも容易に作れるようなのですが、私はココナラというサイトでセミプロの方にかなり安価にて(ほぼ依頼の最低料金程度)作って頂きました。

そうして出来上がったカラオケバージョンは若干の雑音混じりながらも十分満足出来る仕上がりとなりました。オリジナルのヴォーカルに隠れて良く聴こえなかった様々な楽器が活き活きと鳴り響きます。特にベースとドラムの重低音はこれまで以上の迫力をみせ、「これがアイドル歌手の歌っていた曲なのか?」と疑ってしまうほどの素晴らしさ。他にもカスタネットの響きは饒舌に尽くしがたいほどに繊細で美味。ここでのカスタネットの響きは長い音壁史でも最上位と言えるほどの出来と言えますね。またピアノの軽やかで綺麗な音色はヴォーカルにとってかわって主役を務めた感があり、単なるインスト化では物足りなくなりがちなカラオケ版を大いに盛り上げてくれます。更にヴォーカル入りだとなかなかフルヴォリュームで聴く気になれませんでしたが、これなら!と大音量で堪能出来、曲の評価も爆上がりです。優れたウォール・オブ・サウンドは大編成オーケストラのように楽しめる 岩崎元是 / 勇気のつばさでも書きましたが、緻密に細部まで計算し数多くの楽器を丁寧に配置したウォール・オブ・サウンドはインストで聴いてこそより楽しめるという側面が非常に大きいので、是非皆さんも気になる音壁作品をカラオケ化して楽しんで欲しいものです。私は今後もここで幾つかのカラオケ化した作品を公開していきたいと思っています。

こちらで聴くことができます。

ASSOCIATION & COURETTES / NEVER MY LOVE (2022 Wall Of Sound Version)



2015年から活躍しているブラジル人とデンマーク人の男女デュオ、ザ・クーレッツの2022年の作品。フィルスペクターを深く敬愛しているようで、モノラルにこだわったウォール・オブ・サウンドを得意としています。オリジナル作品も良質なウォール・オブ・サウンドを展開し、実に好感が持てますが、彼らはオリジナル作品以外でもウォール・オブ・サウンドを展開しています。下記に列挙した作品がそうなのですが『往年の名曲のヴォーカルのみを抽出し、サウンドは全て新たにウォール・オブ・サウンドとして作り直したもの』です。つまり、私が@otokabe_master氏に作って頂いている「名曲のウォール・オブ・サウンド化」と全く同じことをされている訳ですね。しかもどの作品もしっかりと作りこまれ、フィルスペクターが60年代当時に作ったかのような素晴らしいサウンドが施されています。ウォール・オブ・サウンド史上、このような二次創作を行っているのは、彼らザ・クーレッツと@otokabe_master氏しかいない訳ですので、これは応援しない訳にはいきません。

その中でも特にNEVER MY LOVEの出来が素晴らしい。本曲は1967年のAssociationの世界的ヒット曲をウォール・オブ・サウンド化したもの。オリジナルのコーラスを主体としたソフトロックサウンドとうってかわって迫力あるウォール・オブ・サウンドに仕上がっています。しかもモノラル!カスタネットもこのタイミングでしかあり得ないでしょってな絶妙なタイミングで決め打ちしてくれますね。オリジナルのメロディの出来の良さを活かしつつ、新たな迫力ある味わいあるサウンドで本曲を作り替えたその発想とセンスには敬意を表したい。近年は常々どの曲が「ウォール・オブ・サウンド化」に適しているかと模索している私ですが、この曲は全く候補に挙がらなかっただけに嬉しいプレゼントという感じです。ただ個人的には、奥行や空間的拡がりを感じさせるステレオ感のあるウォール・オブ・サウンドが好きなので、例えば、同じ1967年のヒット曲であり、@otokabe_master氏が作成したFrankie Valli / Can't Take My Eyes off You (2022 Wall Of Sound Long Version)のような現代的なアレンジがより好みではありますね。クーレッツの「名曲のウォール・オブ・サウンド化」はまだまだ続くと予想されますが、こうしたステレオ感のあるウォール・オブ・サウンド化にも期待したいところではあります。COURETTESの今後の益々の活躍を期待します。

「YOU TUBE」で聴けます。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーヴメロディ楽器瑞々しさボーナス(音壁&二次創作)ポップ偏差値合計
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【 COURETTESの他の「名曲のウォール・オブ・サウンド化」作品 】

JAY & THE AMERICANS, COURETTES / COME A LITTLE BIT CLOSER
GRASS ROOTS, COURETTES / WAIT A MILLION YEARS
MAURICE WILLIAMS & THE ZODIACS, COURETTES / STAY
FOUNDATIONS, COURETTES / BABY NOW THAT I'VE FOUND YOU
JOEY DEE & STARLITERS, COURETTES / PEPPERMINT TWIST
FLAMIN' GROOVIES, COURETTES / SHAKE SOME ACTION
JOHNNY THUNDERS, COURETTES / YOU CAN'T PUT YOUR ARMS AROUND A MEMORY

岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) / 泣き顔のPINUP GIRL '07 作曲編曲岩崎元是 「FOR A LONG TIME」収録

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89年には既に書かれていた幻の曲が18年の歳月を経て2007年についに陽の目を見ました。そのせいか2007年のものにもかかわらず80年代特有の青く澄み切った空気感を持った曲で83年の「MELODIES」の頃の山下達郎の持っていた雰囲気に近いものがあります。基本メロディは少しほろ苦感のある爽やかで陽性なもの。サビのテンション高めの高揚感あるメロディラインは実にキャッチー。更に特筆すべきは壮大で重厚なるフィルスペクター/大滝詠一系音壁サウンドの迫力。ドラムのエコー感、グロッケンやカスタネットの煌びやかさ、コーラスの爽快感、エレピの響きなどの奏でる心地よさは大音量で聴いてこそ真価を発揮する。歌声も岩崎元是&WINDY時代よりも円熟味が増し、いい意味で湿り気と適度な重量感が加わっている。メロディもシティ・ポップというよりは濃いめのもので味わい深い。

岩崎元是氏が「声優/アニソン音壁ポップ」に残した歴史的名曲群「・・・」4部作に匹敵する、氏の最高傑作と言っていい、5分33秒にも及ぶ感動の大作ポップです。そのサウンドの爽快感、乾燥感、メロディのキャッチーさ等を考慮すると清涼飲料水のコマーシャル・ソングに最適かと思われます。広告代理店の皆様、急いで契約を!
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(迫力の80S音壁)ポップ偏差値合計
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キンモクセイ / 七色の風 '02 作曲伊藤俊吾 編曲キンモクセイ&佐橋佳幸(BVCR-19050)

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洋楽志向なんで邦楽、特に近年のものを食わず嫌いしていたのですが、ねのすけさんのサイト「Niagara Sound Followers」でオススメのこの曲を聴いて、近年の邦楽にも素晴らしい楽曲があることに気づきました。といってもサウンドは明らかに70/80年代を志向しているから2000年代という時代の空気を良いと感じているのではないのだけれども。(尚、画像2はプロモーションCDジャケット、画像3はCD購入特典ステッカーだそうでコワタさんという方のHPEiichi Kowata's Home Pageから拝借しました。)

出だしのキャッチーなベースソロと直後に入る空高く舞い上がる弦の響き、高揚感&幸せ感いっぱいのサビのメロディが実に70年代していて素敵です。エレピの澄んだ響きと軽やかなカスタネット、深いエコーのかかった分厚いサウンドはナイアガラファンには堪えられないでしょう。約5分と長く楽しめるのは良いがちょっと詰め込み過ぎ感はある。が、こういうサウンドをやってくれちゃうと、それさえも若さゆえの「若気の至り感」があって魅力的に感じてしまうな。それにしても個人的には未だこの一曲しか知らないんだけど、これから他の曲を聴き進めていくのが非常に楽しみなグループ。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(70年代の空気感)ポップ偏差値合計
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小西寛子 / きっと きっと・・・ 作曲編曲/岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) '98
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岩崎元是作曲編曲作品。魔法使いTai! 沢野口沙絵キャラクターソングとのことで私の好きな魔法少女もの。「魔法」というポップにおける大事なキーワードが頻繁に使われ、その世界観を岩崎元是さんが見事に体現しきった快作。出だしドドドーンと始まる大ナイアガラ花火大会とともに入る抜けるように爽快なコーラスは「竹内まりや/もう一度」での山下達郎風。ピアノの連打を中心に、ここぞというところで盛り上がる音壁のぶ厚さ、音像の奥行きの深さはすさまじく、ナイアガラサウンドここに極まり、岩崎元是さんやりたい放題という感じ。爽快で明るくてテンポも良く、高揚感も申し分ない曲調。鐘の音や手拍子が入るのもいいね。強いて言うなら声優さんの歌声が生真面目っぽいかな。ちょっと「ドジっ娘」の要素も入ってるようですので「ドジっ娘」萌えな方にはいいかも。『魔法使いTai! ボーカルコレクション~魔法使いTai!と千億の愛ときゅーきょくのうた~』、『OVA 魔法使いTai! ベストセレクションアルバム 沢野口沙絵のダイヤリー』等に収録。*元ネタ=「竹内まりや / 不思議なピーチパイ」
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(音壁サウンド)ポップ偏差値合計
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【 ポップ偏差値 68

楠瀬誠志郎 / 一時間遅れの僕の天使 '90 作曲楠瀬誠志郎 編曲武部聡志/楠瀬誠志郎

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近年、日本におけるクリスマスソングといえば「山下達郎/クリスマスイブ」が定番ですが、ことスペクター/ナイアガラ系音壁サウンド的視点からみればそのサウンドの派手さにおいてこの楠瀬誠志郎版の方が遥かに上をいきます。キラキラ、シャラシャラとしたカスタネットやグロッケンなどの眩い程に煌びやかな装飾音。多重コーラスはもちろんのこと多重ヴォーカルとでも呼べばいいのか?な凝ったヴォーカルワーク。ステレオ感いっぱいのサウンド的な拡がりとそしてなんといっても深いエコーのかかったドラムスの重低音が快感です。陽性な声質に明るいメロディ、クリスマス観も夢があっていいネ。クリスマスはこうじゃなくっちゃ!

ところで、この曲の他にも音壁度の高い名曲をいくつか残している楠瀬誠志郎氏だが、意外なことに山下達郎氏のFM番組では一曲もオンエアされたことがない。大滝詠一氏は120曲ぐらいかかっているというのにだ。これは一体どういうことだろうか。もしかして、敵(笑)?この曲の歌詞の中でも「きっと君は来ない、と誰かが余計な歌を口ずさむけど」と「山下達郎/クリスマスイブ」を茶化す内容を歌っていることからも怨みでもかったんじゃなかろうか、と邪推してしまいます。(後に楠瀬誠志郎氏は『山下達郎氏の『Sings SUGAR BABE』にバックコーラスの一人として参加された』との情報を頂きました。)

「季節がとうりすぎても」(CSDL-3159)のカップリング曲。「いつも逢えるわけじゃないから…」、「GOLDEN BEST」等に収録。尚「Seven Winter Songs」収録の「98 Jam. Version」は試聴した感じではつまらない出来なのでご注意を。

また、この曲には約50秒ほど長い別バージョンが存在します。冒頭に「A CHRISTMAS GIFT FOR YOU FROM PHIL SPECTOR」の「RONETTES / SLEIGH RIDE」のイントロ部分をサンプリングしたような音が入り、正規版では終盤だけの「RONETTES / BE MY BABY」風コーラスが冒頭から入るのです。どこかのサンプル盤に収録されていた模様です。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(煌きの音壁サウンド)ポップ偏差値合計
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【 ポップ偏差値 67


中嶋美智代 / 泣いていいよ 作曲都志見隆 編曲新川博 '92 「たんぽぽ」収録



90年代に活躍したアイドル中嶋美智代の3rdアルバム「たんぽぽ」収録曲。ゆったりとしたリズムの悲し気な曲だけど聴いてビックリの素晴らしいウォール・オブ・サウンド曲。アイドルポップとしては5分43秒と異様に長い曲で、それだけでも製作陣の気合いの入り具合が伝わってきます。基本はAメロを中心にほとんど盛り上がることなく淡々と歌われるんだけど、重量感のあるドラムやシャンシャン感のあるカスタネットなどで構成されるウォール・オブ・サウンドは実に心地よく、壁の厚み、空間的拡がり、エコー感、とその完成度は非常に高い。メロディもなかなかいいですしアイドル音壁ものの大作と言っていいでしょうね。ただ音壁ものの聴き所であるはずの間奏部分が短く内容もいまいちなのと、感動的であるタイトル部分「泣いていいよ」を含むCメロが一度しか使われることが無いという構成がちょっと惜しい。個人的に先日「YOU TUBE」で見つけたばかりで驚いたのだけれど音壁者の間で話題になったことも無さそうなので、なかなかの発掘と言えるかも。

編曲は当ブログでもお馴染みの新川博氏で、アイドルポップ名曲の志村香 / 秋風はあなた、音壁名曲のERI(菅井えり) / 恋はドーナツショップでそしてやはり音壁のオレンジ・シスターズ / サマー・ホリデーを既に紹介しています。素晴らしい音壁職人ですが探せばもっといい曲あるのかな。

「YOU TUBE」で聴けます。(5分33秒からの曲)

DION / ALWAYS IN THE RAIN '89 「Yo Frankie」収録

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遥か50年代のDOO-WOP時代から活躍するディオンの晩年の作品。Dave Edmundsがアレンジなど多方面に渡って活躍。ここでは怒濤のフィルスペクター/ナイアガラ系音壁サウンドやってます。ポップという観点からすると、どんなアーチストでも経年による鮮度の劣化からは逃れられない。然しながらアレンジ次第ではこれだけポップな作品が出来あがるのだという好例。ちょっと泣きの入った湿ったメロディでヴォーカルの鮮度は落ちるが唱法はさわやかで高揚感、開放感があり熟成した味もする。それに加えて、山下達郎でお馴染みのドゥルドゥルコーラス、カスタネット、グロッケンなどの音色とエコーのかかったドラムスの響きなどがひたすら気持ちいい。ド派手なアレンジだがメロディや歌を殺すことなく絶妙に盛り上げるセンスが素晴らしいネ。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(WALL OF SOUND)ポップ偏差値合計
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LINDA SCOTT / YOU BABY '65 LP(ワーナーパイオニア P-11574)

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60年代の可愛い子ちゃんアイドル歌手、リンダ・スコットの65年にシングルカットされた曲で、日本編集盤の「SINGLES」収録。BARRY MANN-CYNTHIA WEIL-PHIL SPECTORチームによるRONETTESの64年のLP収録曲のカバーです。原曲はシングルカットはされなかったながらも「PHIL SPECTOR / BACK TO MONO(1958-1969)」に収録された程の美しいメロディを持った「WALL OF SOUND」の名曲ですが、ゆったりとしたテンポでポップというには大人しすぎる作り。

それに対しこのリンダ・スコットのカバーは、テンポをグッと早くして全体に元気でメリハリのあるポップな作りとなっています。まずヴォーカルがハキハキと元気で適度に可愛らしいフェロモンを振り撒き、気張ったりするところなんか含めて表現は豊か。コーラスも同様に豊かな表現力で、華やかさと奥行き感を曲に与えています。特に「フゥーウゥーウゥー」と胸の奥深くまで切れ込んでくる、高揚感のある甘酸っぱいコーラスが素晴らしく美味。このフレーズはストリングスでも甘く切なく優雅に奏でられていて、この曲の最大の魅力の一つ。そのストリングス含めて肝心のバック・サウンドもフィルスペクター・クローン的に適度に厚めのサウンドで特にドラムスの重量感と躍動感が高ポイント。

全体として感じられるアップテンポでノリのいいグルーヴ、歌やコーラス、ストリングスなどで奏でる甘く切ないメロディライン、それと重量感のある厚めの音と何拍子も美味なポップの要素が揃った名曲です。ポップという観点からすると当然本家を凌駕する名カバーと言えますネ。なお、ライナーには曲は特定されていませんが「ステレオのマスターテープが届かなかった」とあるので、もしかしてステレオ版が存在するのかも知れません。「YOU TUBE」でも見られるロネッツ版はある程度は有名ですが、このリンダ・スコット版はかつて山下達郎氏によりオンエアされたものの、あまり広く知られていない隠れた名曲と言えると思います。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(名カバー)ポップ偏差値合計
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荘真由美 / わたしと踊ってくれませんか (私と踊ってくれませんか) '87 作曲小林亜星 編曲稲川徹 「BUGってハニー メガロム少女舞4622」主題歌

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このブログを読んで頂けてる日本全国約一桁のアニソン・ナイアガラっ男の皆さん、こんにちは。私は相変わらずポップなアニソンを求めて県内の遠ーくの図書館にあるアニソンコンピを片っ端から取り寄せてもらって日夜聴きまくってます。その甲斐あってか久々に凄いのを発見しました(既出御免)。それがこの曲で、アイドルポップ屈指の泣きナイアガラ名曲「村田恵里 / オペラグラスの中でだけ '85」タイプのバラードで、音壁度は前者以上、メロディもそれに匹敵するほど胸を撃つ黄金旋律です。

出だしのエレピのエコー感ある響きと切ないメロディは「美裕リュウ / ひとりぼっちの僕たち '95」似で、もしかしたらこの曲に影響を与えたのかもしれない。同時に入る男性コーラスの高揚感は山下達郎系。カスタネットの軽やかな音色、ドラムの奥行き感などは典型的なナイアガラのそれ。ヴォーカルの荘真由美さんの声質もまた村田恵里さんに近くちょっと湿り気があり粘着質で、生真面目に切々と歌う雰囲気も似ていますね。更に声優系フェロモンを漂よわせているところがプラスポイント。

劇場用アニメ「BUGってハニー メガロム少女舞4622」主題歌。「BUGってハニー」二代目エンディングテーマで、こちらのTVサイズ版(1分30秒)がCD「東京ムービーアンソロジー4 1983-1991」に収録されています。ただし音がシネテープ?起こしの為か非常に悪いです。私が聴けてるのはこのショートバージョンなのですが、それでもこの曲が村田恵里版に匹敵する名曲であることがヒシヒシと伝わってきます。

正式版は、あのファミコンの高橋名人のシングル皿「グレートキャラバン'87 (Fun House)」のB面に収録。ゲーム関連レコードということで発売枚数の少なさに加え、このB面曲が一部ファンには名曲として知られているようなので、仮にオークションなどに出品されてもかなりの高額になることが予想されます。そうなると自分の手に負える額になりそうにもないので、そっとこのお皿を入手するまで黙っているよりも、ここでこの曲の魅力を広く知らしめた方がフルバージョンが聴ける確率は高まるであろう、という小狡賢い計算のもと日記に書いてみました(笑)。関係者の方、どうか正式版にもう一度陽の目を見させて下さい。フルバージョンお持ちの方、どうか私にお聞かせ下さいませ。

「YOU TUBE」でこの曲のTV版が聴けます。(出だし僅かに切れてます。)

以上を書いた後、レギュラー音源のダウンロード出来る場所を教えてもらえました。

ファミコン少年団 R E U N I O N : 高橋名人ホ完計画

↑こちらです。ちょっと音悪いです。しかしじっくり聴いてみるとあんまりドラムに奥行きの深さは無いですね。カスタネットやエレピ、コーラスなどのナイアガラ・オカズは美味だけど、エコーは浅めだし間奏もいまひとつな出来。でもヴォーカルとメロディはやっぱりいいなあ。(後にモノラル音源であることが判明しました。)

「ニコニコ動画」のこちらでこの曲をステレオで聴くことが出来ます。

岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) / 君は夏色の風 '08 岩崎元是作曲編曲 「SUMMERY」収録

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現存する世界NO.1の音壁職人、岩崎元是氏の最新ミニアルバム収録曲。ことさら「夏」を強調したタイトルや帯コピーで売り出されてます。元々「シティポップ」ジャンルで活躍していただけあって、軽やかな声質に爽やかなメロディ、往年の山下達郎を彷彿させるものを感じさせますね。ただしこの曲は「海辺の避暑地でトランジスタ・ラジオから流れる」だけでは決してその真の良さは味わえません。

綿密に作りこまれた音壁サウンド(WALL OF SOUND)は大型スピーカー等で爆音で聴いてこそ真価が発揮されるからです。鈴や鐘、カスタネットといった高音域からストリングス、エレピ、コーラス、ギターなどの中音域、ベースやドラムスの低音域など多種多様な装飾音が万華鏡のように色鮮やかに散りばめられたサウンドは、さながらべらぼうに高い金を払って食べる高級料理でも味わうかのように真剣に向かい合って味わうべき逸品なのです。

曲の展開もじっくりと聴けば、サラリと流暢に流れてはいなくて、音壁を強調するために、タメ、遊び部分を多く取り、よりウォール・オブ・サウンドが楽しめる「くどい」作りになっています。また、ドラムスの低音部分もいつにも増して過剰に強調されており、特に終盤で聴けるエコーの効いた重低音ドラムスの乱れ打ちが素晴らしく、これはヘッドフォンではなく是非ディスコなどの大型スピーカーでボディソニック的に全身で体感して欲しい内容。

もちろん良質なシティポップとして、そのメロディや歌の出来は標準以上のモノがありますが、逆に言えば、このレベルの「メロディや歌」のポップソングは探せば幾らでも有るということ。然しながら、ここで聴ける2008年度/国内産の重厚で煌びやかな音壁サウンドは紛れも無く世界最高峰かつ希少な逸品である、ということです。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(重厚な音壁)ポップ偏差値合計
888668108567


【 ポップ偏差値 66

JAMES DARREN / ALL '66



1966年のイタリア映画「Run For Your Wife」のテーマ曲のカバーで、ウォール・オブ・サウンド仕様曲。この「ALL」については既にCAFE APRES-MIDI ベスト10 優雅で上品 LES MCCANN LTD. / ALL '67としても取り上げています。ジェイムズ・ダレンは当初はアイドル、後にはナバロンの要塞出演など映画俳優としても活躍していたアメリカの歌手で、このバージョンは1966年にシングルカットされ中ヒットとなっています。アレンジはLeon Russellで、彼はフィルスペクター作品に参加していたようなので、ウォール・オブ・サウンドに対する興味が高かったのかも。オリジナルはメロディの良さはあってもいまいちキャッチーさにかけメリハリの無いアレンジもあり魅力薄だったけれども、本曲はテンポを上げゴージャスな雰囲気を出して音壁仕様にしたことで見事に魅力的な作品に仕上がりましたね。全編に渡って響き渡るカスタネットの快活な響きが特徴的で実に心地よく、更に特筆すべきは間奏部分のインストパートで、オリジナルの持つ優雅で上品かつ情緒的で魅力的なメロディがストリングスやコーラス、更にカスタネットと混然一体となって織り成す厚い音壁世界は、フィルスペクターのクリスマスアルバムでのインストパートに匹敵するかのような魅力を持っていると感じます。

「YOU TUBE」で聴けます。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーヴメロディ器楽瑞々しさボーナス(優雅さ)ポップ偏差値合計
77777998566


FOUR SEASONS / DAWN (GO AWAY) 悲しき朝やけ '64



フランキー・ヴァリ率いるザ・フォーシーズンズの1964年の音壁ヒット曲。前年の1963年にヒットしたフィルスペクター制作の「CRYSTALS / THEN HE KISSED ME」とか、アルバム「A CHRISTMAS GIFT FOR YOU」辺りのジャンチャカ、ジャンチャカ・タイプのウォール・オブ・サウンドの影響をモロに受けてますね。そういったサウンドの曲は数多いけど、この曲はメロディも抜群に良い所に価値があります。ちょっと憂いを帯びた悲しげなメロディだけど、瑞々しいサウンドの快活なリズムにのって暗くなりすぎず元気な曲調に仕上がったのがイイ。時折気張ったりファルセットを交えたりと変幻自在なヴァーカルも魅力的ですね。大好きな曲です。

「YOU TUBE」で映像付きで楽しめます。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーヴメロディ器楽瑞々しさボーナス(ファルセット)ポップ偏差値合計
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BAY CITY ROLLERS / SUMMER LOVE SENSATION '77

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ベイシティーローラーズのヒット曲で邦題「太陽の中の恋」。まさに邦題通りの明るく幸せ感に満ちた陽気なポップス。ピアノの連打と鐘の音が鳴り響いて始まるという個人的にとってもツボな出だし。ここはフィルスペクター/ナイアガラ系音壁サウンドと言っていいでしょう。その後のAメロこそ単調なベース中心の暗めのトラックだけど、サビに向かって徐々に盛り上げていく様が楽しい。そしてサビで一気にメロディ大爆発。ストリングスやコーラスと一体になってハイテンションで歌うレスリーも能天気でいいのです。途中「ドゥワップ、ドゥビドゥ」なコーラスでブレイクが入ったりと展開もなかなか。

最近Shelley's Childrenというグループが女性ヴォーカルでカバーしていてこれもなかなかの出来でオススメです。基本的に忠実なカバーなのですが、ヴォーカル含めて全体的にエコーがかかり、ドラムス、ベースなども重量感が増した感じで、より音壁っぽいです。流石にボーカルに能天気さが足りず、こういうカバーを聴くとあらためてレスリーの能天気さの偉大さに気づきます。それにしても小学6年生の頃に聴いたBAY CITY ROLLERSが洋楽初体験な私ですが、まさか40歳過ぎてこの曲の感想を書くようになるなんてねえ。

「YOU TUBE」でこの曲の映像が見れます。出だしでウッディ(二宮和也似だな)が叩いてる鐘って正式にはなんて楽器名でしょうか?またこういうピアノの連打って何か専門的な言い回しがあったような気がするのですが?
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(ピアノ連打と鐘)ポップ偏差値合計
99966788466


【 ポップ偏差値 65

フランス・ギャル / 夢みるシャンソン人形(Poupee de Cire Poupee de Son) '65



フランスのギャルによる1965年の世界的ヒット曲でウォール・オブ・サウンド仕様曲。作曲は「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」などで知られるセルジュ・ゲンスブール。バックの演奏はAlain Goraguer Und Sein Orchesterということで、65年ものとしてはサウンドに厚みがあるのが特徴的。ドカドカと激しいドラムに延々と鳴り響くカスタネット、緊迫感のあるストリングスなど音壁要素は濃く出来も良い。前年の64年産フィルスペクターのRonettes / I Wonder辺りの影響を強く感じます。キャッチーで出来の良いメロディで有名だけど、音壁曲としてももっと評価されてしかるべきかと思いますね。特にカスタネットの鳴りっぷりが素晴らしく、ぶっちゃけトラックの使い回しがあって良し。カバーも沢山出ててSPOTIFYで沢山聴いてみたけど、やはり安直にメロディだけ頂きました感が強い曲がほとんどでがっかり。カスタ入りは皆無に等しいですね・・・。(以下に気になった曲を幾つか取り上げておきます。)因みに71年の手塚治虫のアニメ「ふしぎなメルモ」のOP曲の元ネタになってると思うんだけどどうでしょう。

「YOU TUBE」で聴けます。

CALOGERO (LIVE)
なかなか迫力あるハードなサウンド。ドラムがいいね!

NICOLE FELIXOVA , KAREL VLACH SE SVYM ORCHESTREM
忠実なコピーに近いけど。やはりオーケストラは一味違う。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーヴメロディ器楽瑞々しさボーナス(カスタネット)ポップ偏差値合計
77777997565


GIRLFRIENDS / MY ONE AND ONLY JIMMY BOY '63



63年の即席的に作られた3人組ガールグループの63年の「Crystals / Da Doo Ron Ron」タイプの音壁ポップ。「ダドゥロンロン」が同じく63年産なので、将に2匹目の泥鰌を狙った感じですが、作者はなんと後のブレッドのデビッドゲイツ。なるほど流石のメロディラインとなっています。更に疾走感とヴォーカルの瑞々しさ、手拍子の入る楽しさ、グルーヴ感など、その爆発力は本家に引けをとらない素晴らしい内容。「ダドゥロンロン」タイプの名曲って探せば結構ある気がするんだけどどこかまとめてらっしゃる所ないですかねえ?

SONYから出たフィルスペクター以外の音壁ものを集めたコンピTHE TASTE OF WALL OF SOUNDにも収録されています。因みにこのコーナーではフィルスペクターがプロデュースしたもの以外のウォール・オブ・サウンドを取り上げることが多いけど、あくまでスペクター関連を一通り網羅されている方のご来場を前提にしています。

「YOU TUBE」で聴けます。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーヴメロディ器楽瑞々しさボーナス(音壁サウンド)ポップ偏差値合計
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小西寛子 / BE ALL RIGHT・・・~高石タケルのテーマ~ '00 作曲編曲岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) デジモンアドベンチャー
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岩崎元是作曲編曲で大滝詠一系ナイアガラサウンド炸裂の傑作曲。この曲もタイトルに「・・・」が付き、先に紹介済みの「鈴木真仁 / あのね・・・。」,「金月真美 / 夏に、まだ少し・・・」,「小西寛子 / きっと きっと・・・」と並んで名実ともに岩崎元是、ここぞという時に付ける勝負の「・・・」4部作の一つと言えるでしょう。4部作の中では最も近年の作品で、かつかなり湿っぽいメロディを持ちます。個人的にこの湿度はどうかというほどの大泣きのメロディですが、お好きな方の中には4部作中最高のメロディと感じる方もいるはず。サウンドはカスタネット、エレピ、鐘の音等が深く鳴り響くいつもの重厚な岩崎元是サウンド、素晴らしい出来です。「高石タケル(画像2)のテーマ」ということで歌詞は「ボクら」,「天気になれ」など「男」言葉も多い。それを声優フェロモンたっぷりな可愛い女性ヴォーカルで歌うので、かなりそれ系属性(何と言うんだろう)を持つ者は堪えられないはず。いや、私もいいなと感じ始めてるんですがね(笑)。

「デジモンアドベンチャー・ベストヒットバレード」など幾つかのCDに収録されています。このデジモンアドベンチャーというのは子供たち(と一部のショタコン腐女子/因みに受けキャラのもよう)に人気のようで、レンタル店や図書館など置いてあるところが多いようです。また、「デジモンアドベンチャー・キャラクターソング+ミニドラマ3」で試聴できます。ここにはカラオケバージョンも収録されています。内容も素晴らしく岩崎元是音壁サウンドをより堪能するには絶好の機会かと思われます。それにしてもこれもまたジャケ買いでは絶対に辿り着けないナイアガラ系作品だろうなあ。*元ネタ=「BRUCE SPRINGSTEEN / HUNGRY HEART」、「佐野元春 / SOMEDAY」
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(音壁サウンド)ポップ偏差値合計
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【 ポップ偏差値 64

薬師丸ひろ子 / 夕暮れを止めて '91 作曲楠瀬誠志郎 編曲清水信之 「風に乗って」



80年代初期に一世を風靡したアイドル歌手、薬師丸ひろ子の91年のCDシングル「風に乗って」のカップリング曲。ベストアルバム「歌物語」にも収録されています。曲はしっとりと落ち着いたアイドルバラードだけど、聴いて驚きの実に完成度の高いウォール・オブ・サウンド仕様。作曲編曲は92年のハリーラブなCRAZY FOR YOUで当ブログでもお馴染みの楠瀬誠志郎&清水信之のコンビ。楠瀬誠志郎氏はやはり音壁な一時間遅れの僕の天使でもお馴染み。カップリング曲という地味な位置での作品だけど、その音壁は実に素晴らしく渾身の力をこめた傑作と言えるでしょう。重量感のあるベース&ドラムにエコー感のあるピアノが軽快に鳴り響き、カスタネットの繊細な響きも心地よい。全体としてバランスの取れた内容で、大型ステレオシステムでの大音量再生でも全くアラの聴こえない素晴らしいサウンド。個人的には薬師丸ひろ子の声質や唱法がいまいち馴染めないけれどメロディの出来も良く末永く愛聴出来そうな予感。つい先日やはりアイドル音壁大作の「中嶋美智代 / 泣いていいよ」を発掘したばかりだけど、検索してみるとこの曲も音壁者には馴染みのない埋もれた名曲の発掘と言えそうです。

「YOU TUBE」で聴けます。

The Cake / BABY THAT'S ME '66



フィルスペクター風ウォール・オブ・サウンドなアレンジが施された67年のガールポップ。オリジナルは64年のFashionsで、フィルスペクターと多くの音壁を作り上げてきたJack NitzscheとJackie DeShannonによる作品。(海賊盤コンピCDTOUCH THE WALL OF SOUNDにも収録されています。)その後、Lesley Goreにもカバーされているようです。ニューヨークで結成されたガールグループのケイクによるカバーは前二者と違い大幅な音壁作品になっています。いきなりのイントロのエコーのかかったベースが迫力満点でちょっと神々しい輝きを放っていて痺れます。その後に展開されるサウンドも重厚で奥行のある内容。ちょっと甘く切ないメロディの良さに品の良いストリングス、憂いを帯びた女性コーラス、何より全体的に靄のかかったかのようなエコー感たっぷりで神秘的な雰囲気が素晴らしい。ジャケット写真を見ると66年ということで何やらサイケデリックで強面な雰囲気ですが、曲の印象は全く異なりますねえ。本家フィルスペクターに勝ると言っても過言ではない素晴らしい作品です。

「YOU TUBE」で聴けます。

JACKIE TRENT / IF YOU LOVE ME, REALLY LOVE ME '64



1950年のシャンソン・ヒット「Edith Piaf / L'hymne à l'amour」をイギリスの女性歌手ジャッキー・トレントが英語歌詞でウォール・オブ・サウンド仕様でカバーした曲。(英語版の初出は「Vera Lynn / If You Love Me (Really Love Me)」のもよう。他にもPaul Anka、Brenda Lee、Bobby Vintonといった大御所など数多くのカバーが存在するポピュラーヒットです。)

オーケストラの指揮は映画音楽で有名なTONY HATCHですが、フィルスペクターも顔負けの迫力ある音壁仕様。このサウンドにJACK NITZSCHEなどフィルスペクター関係者がどの程度絡んでいるのか知りませんが、64年という音壁創生期の作品ということを考えれば実に素晴らしい作品ですね。オリジナルの少し悲しげなメロディの出来が秀逸であるのは当然ですが、物静かで大人しい内容であったオリジナルや派生作品をアップテンポで快活な内容に大変革した発想に妙味があります。ジャッキー・トレントによる大仰な歌いこみとの相性もバッチリですね。音壁の効果というのはこうした過去の名曲に新たな命を吹き込むのに実に適している気がします。もっともっと多くのオールディーズ名曲がこうして音壁変換されて欲しかったですね。因みにこの秀逸な音壁トラックは、日本産音壁良曲の「YUI(浅香唯) / Ring Ring Ring」の元ネタになっているようです。

「YOU TUBE」で聴けます。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーヴメロディ器楽瑞々しさボーナス(音壁サウンド)ポップ偏差値合計
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Ike & Tina Turner / I'll Never Need More Than This '66「River Deep Mountain High」収録



創生期の音壁仕様ハリーラブ。「THE SUPREMES / YOU CAN'T HURRY LOVE」がリリースされたのが1966年の7月で、このアルバムが同年9月。そしてベースは同じく創始者のCarol Kayeなので、まさに純粋直系のハリーラブということになります。スピード感こそ感じられないものの、ティナ・ターナーの歌との相乗効果もありグルーヴ感はより黒く増していますね。そして何よりもフィルスペクターPによるウォール・オブ・サウンド仕立てで、エコー感、重量感、そして奥行きのある味わい深いサウンドとなっています。特に途中一瞬小休止が入る演出は素晴らしい。またストリングスが優雅に鳴り響く間奏部分も聴き所です。サウンドもゴージャスですがメロディも大仰で何やら壮大な世界観が構築されていそう。こういう曲、というかそもそも音壁とティナの大仰な唱法は相性がいいですね。是非爆音でお試しを。

「YOU TUBE」で聴けます。(音悪いです。)
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーヴメロディ器楽瑞々しさボーナス(音壁ハリーラブ)ポップ偏差値合計
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山下達郎 / ヘロン '98 作曲編曲山下達郎

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クリスマスイブなどの大ヒット曲を持つ日本有数のメロディーメーカーとして知られる山下達郎氏ですが、アレンジャーとしては、それ以上の才能と実績を持った世界有数の存在であると言えます。そのアレンジの妙技を分かり易く魅せてくれるのが、氏お得意のウォール・オブ・サウンド(いわゆる音壁)もの。大瀧詠一や岩崎元是に量的には劣るものの、そのクオリティの高さは両者と全く互角と言っていい程ですね。

98年産のこの音壁曲は、冒頭で怒濤の如く押し寄せる大量のカスタネットの響きに圧倒されます。カスタネットを2~30個も使ったという、音壁構築に対する情熱、生音に対する愛情に好感が持てます。手拍子、グロッケンなどの中高音域での耳辺りの良さに加え、流麗なエレピの響きなどのエコー感も素晴らしい。もちろん重低音領域への配慮もしっかりと為されており、結果、非常に迫力のあるウォール・オブ・サウンドを聴かせてくれます。

尚、この「ヘロン」トラックを使用した「新山志保 / 青い空 青い海 '98 作曲編曲/岩崎元是」も同等の快楽を得られる逸品として音壁マニアには非常に評価の高い曲です。(「YOU TUBE」試聴はこちら) 達郎版はちょっとメロディが大味で飽き易い感がありますが、元是版のこちらは淡い雰囲気を持った女性ボーカル、メロディと相まって長く繰り返し楽しめる内容となっていてお勧めです。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(大量生カスタ)ポップ偏差値合計
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原めぐみ / トビラ~EVERLASTING LOVE~ '09 作曲渡辺博之 編曲土屋剛 「EVERLASTING LOVE」収録

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当ブログでも既に「CONNIE FRANCIS / DON'T EVER LEAVE ME」のカバー「離さないで('81)」を紹介ズミの元アイドル歌手・原めぐみさんが28年ぶりに2009年に発表した曲。「離さないで」同様こちらも音壁仕様となっていて両曲ともミニアルバム「EVERLASTING LOVE」に収録されています。ジャケットは、フィルスペクターPによる名作「...Presenting The Fabulous Ronettes」の文字表現や髪型を真似たりと60年代ウォール・オブ・サウンドへの強い憧れを感じさせますネ。そしてサウンドはそれから半世紀ほど経たここ日本で大滝詠一P、岩崎元是Pらによって独自に発展を遂げた最新式のものです。

ウオーキング・テンポでカスタネットの入る厚みのある音造りは「山下達郎 / ヘロン」タイプか。メロディこそ少し憂いを帯びていて明るく元気という訳ではありませんが、活力を感じさせるサウンドに載って全体としてなかなかの味わい。時折エコーを効かせた骨太で迫力のあるドラムやベースは重量感もバッチリですね。優雅でいながら切れ味の鋭い弦の音色も魅力的で厚みあるサウンドの重要な役割を果たしています。グロッケンや鈴の音のシャンシャン感、カスタネットの心地よい響き、小気味良く転がるドラムスなど細やかな演出も素晴らしい。

そして日本産音壁には欠かせない「ジャン、ジャン、ジャン、ジャジャジャジャジャン」やその後の盛り上げる「ダー、ダー、ダー、ダー、ダ」などのお約束ブレイクビーツ(何て言うんだろう?)もメリハリを付けて実に効果的ですねえ。間奏のストリングスも60年代を彷彿させノスタルジックなムードに浸れて感動的。音圧の高いミックスは細やかな音も埋没することなく活き活きと聴こえ、こちらもいい仕事。原めぐみさんの歌声もうまく馴染んでいます。全体として「これでも食らえ!」と言わんばかりに目一杯に詰め込んだゴージャスな音造りは身内のことのように嬉しく思うし、その気概には多いに共感するのであります。「YOU TUBE」で聴けます。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(迫力の音壁)ポップ偏差値合計
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【ご参考】(jisakuさん、どうも有難うございます。)

「原めぐみ / 見つめあう恋」

「原めぐみ / 涙のメモリー」

ALAN PARSONS PROJECT / DON'T ANSWER ME '84

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イギリスのロックグループによって80年度中期に蘇ったウォール・オブ・サウンド。ロックと言ってもその洗練された雰囲気と感傷的なメロディから所謂AORとして捉えた方が良さそうですね。メロディの優しく湿り気のある内容と対比してサウンドは力強い音壁となっています。厚めに奏でられるカスタネットとアコギのシャンシャン感で全体をリード。メリハリのあるドラムスが快活さを醸し、ポップ感を増幅させています。リードの適度に力の抜けた唱法やメロディの作りからすると静かなバラードとして作られるべき内容だったとも言えますが、思い切った音壁仕様とすることで世界的成功を収めることが出来ました。

「YOU TUBE」でプロモーション映像が見れます。音壁を楽しむならこちらで。
明るく元気テンション高揚感疾走感グルーブメロディ器楽瑞々しさボーナス(シャンシャン感)ポップ偏差値合計
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